20分過ぎのSC導入で各チームのピットが大混乱に
スタート進行が順調に進み、定刻より少し早い13時28分06秒にマツダの滝村典之執行役員が補助信号となるマツダ社旗を振り下ろすとともに、ローリングスタートで戦いの火蓋が切られました。今回も優勝を争うと見られるチームのスタートドライバーには、実行委員会が決めたハンディキャップを30分以内に消化する義務があります。前回優勝の「Tipo/Daytona」には180秒、実績十分の「J-wave」に120秒、さらに88号車「carview」に90秒、残る10チームにも60秒のピットストップが課せられました。

このピットイン義務が一段落すると、ノーハンデのチームがリーダーボードの上位を占めるようになります。前回同様、5周目にトップに立ったのが60号車の「CAR GRAPHIC」。レース開始後30分経過時点で首位のチームに与えられるブリッド賞も目指していたと思われますが、そこで事件が発生します。20分過ぎに1台のマシンが最終コーナーでコースアウトし、グラベルにハマって脱出不能になったのです。

この救出のためにセーフティカー(SC)が3周にわたって導入されました。この時点ではまだ最初のドライバー交代には少し早すぎるタイミングだったのですが、今回のSCドライバーが引っ張る速度が低めだったこともあり、各チームのピットが慌ただしく動き始めます。ご存知の方も多いと思いますが、「SC導入中のピットイン」というのは耐久レースでの鉄則です。ライバルたちが速度を落として周回している間にピットに入ることでタイムロスを小さくし、コースに復帰すればすぐに最後尾まで追いつくことができるからです。

ただし、各ドライバーの連続運転時間が40分以下で、2回の合計は80分までというのが今回のルールです。さらに主催者が“助っ人”と認定したドライバーの運転時間は30分以下。先にも書いたように、ピットインの最低義務は3回(ハンデによるピットインは除く)。ピットロードには速度制限もあるので最短でも30秒程度のロスが生じるのと、安全のために1分間の停車が義務となっています。当然どのチームも3回のピットインで走りきることを目指していますし、それができなければ勝負になりません。

こうしてSC導入中となった、スタート後30分のブリッド賞は777号車の「ルボラン」が獲得。さらにSCがいなくなってバトルが再開すると、女性ジャーナリスト集団の3号車「ピンクパンサー」が10ラップにわたってトップを快走しました。しかし、この2チームはスタートドライバーのままだったので、ほどなくしてピットイン。36周目が終わった段階で首位に立ったのが、55号車の「Start Your Engines」でした。

この日は序盤から、55号車の積極的な走りが目立っていました。オープニングラップで先頭に出ると、4周目から20周目までは2位で追走します。SC導入で最初のドライバー交代を済ませて5位でコースに戻り、25周目には3位まで浮上。33周目に2位となり、36周目に再び先頭に返り咲きます。さらにそこから、112周目を先頭で走り終えてチェッカーフラッグを受けるまで、一度も先頭を譲ることのないパーフェクトなレース運びを見せました。












120秒ハンデの「J-wave」に痛恨のペナルティ裁定
55号車にわずか11.546秒遅れてチェッカーを受けたのは、813号車の「J-wave」でした。2014年と2015年に2連覇を達成し、2017年と2019年にも優勝という強豪が、今回も120秒というハンデを跳ね返して堂々の2位。じつはドライバー連続運転時間を超過してしまったために、ペナルティストップ60秒を課されていたのです。ここは富澤 勝さんが“助っ人”に認定されたため、他のチームよりも厳しい綱渡りが求められたこともあるでしょう。

さらに813号車の約6秒後方で、3位となったのは12号車の「人馬一体」。第30回大会の4位を上回る、ベストリザルトの更新です。今回は廣瀬一郎専務執行役員を筆頭に、齋藤茂樹ロードスター開発主査、話題の「990S」の味付けを担当した川田浩史さん、同じく操安担当で「KPC」を仕上げた梅津大輔さんという研究・開発の現場で固めたメンバーがチームワークを発揮しました。

以下、4位には99号車「CT&オートメッセWEB」、5位には100号車「LOVECARS TV」、6位には74号車「REVSPEED」と、予選でも上位を占めた実力派のチームが続きます。前年優勝の27号車「Tipo/Daytona」が7位で、ここまでがトップと同一周回というハイレベルなバトルでした。さらに8位から12位までの5チームも1周遅れという接近戦で、SC導入もあったせいか、ガス欠でストップするチームがゼロというのも記憶にないことでした。

ちなみにスタート後1時間30分のトップに与えられるエンドレス賞も、もちろん55号車が獲得。完走チームの中で最も順位を上げたチームに与えられるクスコ賞は、予選17位だった12号車「人馬一体」がゲットしました。さらに賞典対象ではありませんが、ファステストラップは予選トップだった「REVSPEED」の梅田さんが1分10秒743を102周目に記録。梅田さんは最終盤、予選でも火花を散らした「Tipo/Daytona」の橋本さんとサイドbyサイドのバトルを延々と披露して見せました。

優勝チームの予選アタックとアンカーを務めた桂 伸一さんは「813号車の追い上げは凄かったけど、年寄りの自分に燃料を残してくれたふたりのおかげです」とチームメイトに感謝。作戦担当の石井昌道さんは「今回は新しいことにもチャレンジして、セーフティカーも上手く利用できました。唯一の心配は御大(SYE主宰の清水和夫さん)がいない時に勝っちゃったことですね」と振り返ります。若手の齋藤洋輝さんは「楽しかったです。ありがとうございました」とコメントしました。










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